上記のように考えている方がいたら、それは大きな間違いです。
確かにコンプレッサーは、音を圧縮するプラグイン以外の何者でもありません。
ですが、コンプレッサーには種類があり、それぞれ特徴や使い方が異なります。
今回はDTMユーザー向けに、コンプレッサーの種類別の特徴と使い方を解説しましょう。
コンプレッサーの種類1、FETコンプレッサー
「FET」とは、「フィールド・エフェクト・トランジスタ」の略です。
最も有名なFETコンプレッサーと言えば、「UREI 1176」でしょう。
DTMでは、Logic純正の「Studio FET」や「Vintage FET」、Wavesの「CLA-76」がこのFETコンプレッサーに当たります。
FETコンプレッサーの特徴
FETコンプレッサーの一番の特徴は、「アタックタイムの速さ」これに尽きます。
他の種類のコンプレッサーも素晴らしい物が多いですが、このFETコンプレッサーのアタックタイムだけは再現不可能です。
FETコンプレッサーにはスレッショルドが固定されているので、ツマミが存在しません。
逆を言えば、インプットのツマミを上げてゲインリダクションを調整するだけです。
音量が大きくなったり小さくなった分は、アウトプットのツマミで調整します。
FETコンプレッサーのアタックとリリースのツマミには、一つだけ注意点があります。
それは、大半のFETコンプレッサー(CLA-76含む)は、右に回すほど速くなる点です。
通常のコンプレッサーと逆なので、この点だけ注意してください。
FETコンプレッサーの使い方
この速いアタックタイムのFETコンプレッサーは、以下の用途でよく使われます。
・ギターやベース
・ボーカルのかけ録り
FETコンプレッサーはアタックタイムが速すぎるので、バスコンプやトータルコンプには不向きです。
コンプレッサーの種類2、VCAコンプレッサー
次に紹介するのが、「VCAコンプレッサー」です。
「VCA」とは、「ボルテージ・コントロール・アンプリファー」の略です。
世界中のスタジオで最も使われたコンプレッサーと言っても過言ではないでしょう。
SSLのバスコンプレッサー、API2500シリーズ、DBX 160など、名前を挙げればその理由に納得していただけるはずです。
VCAコンプレッサーの特徴
このVCAコンプレッサーもかかりが速いコンプレッサーですが、FETコンプレッサーと比べるとナチュラルなかかり方が特徴ですね。
その理由は、「電圧制御アンプ」にあると筆者は考えます。
通常のコンプレッサーは、この電圧制御アンプを構造内のどこかに埋め込むのですが、VCAコンプレッサーは電圧制御アンプを回路内に埋め込んでいます。
この集積回路が、音の歪みを抑えてナチュラルなコンプレッションを実現させました。
この特徴は、プラグインでも再現されています。
また、スレッショルドやニーのツマミがあるので、他のコンプレッサーよりも細かい調整が効くのもVCAコンプレッサーのメリットです。
VCAコンプレッサーの使い方
VCAコンプレッサーの使い方は、以下の通りです。
・楽器ごとのバスコンプ
ナチュラルでありつつ音をしっかりとまとめてくれるので、ドラムキット全体などのバスコンプやマスタートラックでの楽曲全体のまとめに使われます。
コンプレッサーの種類3、Optoコンプレッサー
正式名称「Opticalコンプレッサー」は、「光学」を用いて作られたコンプレッサーです。
有名どころと言えば、「Teletronix LA-2A」ではないでしょうか。
Optoコンプレッサーの特徴
Optoコンプレッサーは、名前の通り制御に光学を用いている珍しいタイプのコンプレッサーです。
光学と聞くと速くかかるイメージがありますが、実際のかかり方は遅めなのが特徴です。
FETコンプレッサーが「速くかっちりかかる」ならば、Optoコンプレッサーは「ゆっくりふわっとかかる」タイプですね。
ナチュラルなコンプレッションが特徴なので、FETコンプレッサーの真逆と言えるコンプレッサーです。
Optoコンプレッサーの使い方
FETコンプレッサーが打楽器やギターなどの音の立ち上がりが速い楽器に合うのに対し、Optoコンプレッサーは以下の楽器によく合います。
・ピアノやストリングス
・その他アコースティック楽器
Optoコンプレッサーは、自然に音量を揃えるのに重宝するコンプレッサーですね。
バラードや弾き語りなど、静かな楽曲では特に活躍してくれるでしょう。
コンプレッサーの種類4、真空管コンプレッサー
真空管コンプレッサーは、今回紹介した中で一番音質変化の大きいコンプレッサーです。
実機で有名なのが「Fairchild 670」で、兼ねてより「ただ通すだけでも意味がある」と呼ばれてきました。
真空管コンプレッサーの特徴
真空管コンプレッサーの一番のは、「倍音付加効果」です。
インプット量を増やせば増やすほどに倍音が付加されるので、コンプレッション以外にエンハンサーとしての役割も果たします。
そのため、真空管コンプレッサーを通すと、ちょっと古臭くて温かみのある音になるでしょう。
真空管コンプレッサーの使い方
真空管コンプレッサーの使いどころはちょっと難しいですが、以下の場合に合うと思います。
・柔らかい音に仕上げたい時
・楽器ごとのバスコンプ
真空管コンプレッサーは、楽曲によって凄く合うか全然合わないかどちらかになると思います。
そのため、購入の優先順位は低くなりますが、一つ持っていると面白いでしょう。
まとめ
今回はDTMユーザー向けに、コンプレッサーの種類別の特徴と使い方を解説しました。
過去の名機達を購入しようとすると、何百万円とかかってしまいます。
ですが、現在ではその音に似たプラグインが安く誰でも使える時代になりました。
実機と同じ音にはなりませんが、それぞれ特徴を掴んだ仕上がりになっています。
アナタのミックスした音源のクオリティを上げるために、コンプレッサーを上手く活用してください。