音楽はメロディーと歌詞が出来上がれば完成ではなく、聞き手に届けるためには楽器や歌を録音してCDなどに収める必要があります。
この際に必要になるのがマスタリングとミックス(ミキシング)です。作った音楽を届けるために必須の工程なのですが、マスタリングとミックスの違いってピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
どちらも音を調整する工程なのですが、その役割は大きく異なります。
歌詞カードなどのクレジットに記載されているにもかかわらず、音楽好きでも知らないマスタリングとミックスの違いを解説します。
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マスタリングとミックス(ミキシング)の違い
マスタリングとミックスは一言でいえば、どちらも音を「調整する」作業です。
そのため表面上はとても似通っているのですが、実際はその方向性の違いから大きく異なる工程です。それぞれの違いを見ていきましょう。
マスタリングは聴き手に最適化する作業
マスタリングは聴き手に最適化する作業で、大きく2つの役割があります。
- 聴く環境ごとの差をなくす
- 曲ごとの差をなくす
聴く環境ごとの差をなくすことで理想の音に近づける
音楽を聴く環境は様々です。作り手が最新鋭の音響設備の中で高級ヘッドホンなどを使い音楽を作っていたとしても、聞き手も同じ条件とは限りませんよね。
安いイヤホンを使っている場合があれば、ワイヤレスイヤホンを使っている人もいるでしょう。スピーカーで流す人もいれば車内で聴く人もいます。スマホで聴く場合やウォークマンなどの音楽再生機器で聴く場合もあるでしょう。
このように音楽の再生方法や環境は様々なので、聴く条件が異なってもできるだけ理想の音で聴いてもらえるよう調整する作業がマスタリングの役目です。
カップラーメンに湯切り時間や後入れ・先入れスープなど指示が多いですが、あれは最高に美味しい状態で食べてもらうためのものですよね。
マスタリングもこれと同じで、どんな人に対しても最高の音楽を届けるために調整を施します。
曲ごとの差をなくす
もう一つの役割は曲ごとの差をなくすことです。
アルバムなどが顕著ですが、どの曲も同じ環境で作られたものとは限りません。
最新の曲と過去の曲を同じアルバムに収録する場合や、インディーズ時代の音源を収録する場合もあるでしょう。
こういった際に1曲目2曲目と連続して聴くと、1曲目は低音が強かったのに2曲目では低音が弱いなど差が生じやすく聴きづらくなるものです。
戦隊モノヒーローなのに装備は違う、デザインも違う、掛け声は揃っていないという状態では視聴者は戸惑いますよね。
そんな凸凹感をなくし機材などの差で音質や音量に違いが生じないように、均一化するのもマスタリングの役割です。
ミックスは音同士を調和させる作業
ミックスは楽器や歌声などの音同士を調和させる作業です。
ギターやベース、ドラムなど様々な楽器や歌声といった音を組み合わせて一つの曲となりますが、ただ単に録音して合わせればOKというわけではありません。
そのままでは調和がとれておらず、音楽として完璧な状態ではないからです。
例えばケーキを作る際に、小麦粉と卵と砂糖などの材料を同じ分量で混ぜても美味しいケーキは出来上がりませんよね。適切な分量に整えてこそ美味しいケーキに仕上がります。
これは音楽も同じで、各パートの音量や音質を調整することで曲が完成します。
ライブで「ベース全然聞こえなかった」とか「ギターがうるさくて歌が全然聞こえなかった」なんてことが特にアマチュアや経験の浅いバンドなどにありがちです。これは音同士の調和がとれていないから起こります。
そんな聴きにくい音楽にならないように、曲単位で各パートの音量や音質を調整するのがミックスの役割です。
マスタリングとミックスを経て音楽は完成する
アルバムやシングルなど複数の曲同士のバランスを調整し、どんな環境で聴いてもいい音楽に仕上げるのがマスタリング。対して曲の中で各パートごとのバランスを整えるのがミックスです。
どちらも音楽の完成に欠かせない工程で、同じように音を調整する作業ではありますが詳しく見ると大きく異なります。
「リマスター版」や「再録」などバージョン違いの音源が発売されることがありますが、原曲と聴き比べてみると違いがわかって面白いかもしれませんね。
こうした作業の重要性や作業内容を知っておけば、どこに予算をかけるべきなのか、理想の音源にするためには何が必要なのかが見えてきます。
より良い音源に仕上げるために大事な工程なので、アーティストの意思をくみ取れるエンジニアとタッグを組めば一層質の高い音源を作り上げることができるでしょう。