プロのミュージシャンって、みんな楽譜読めるの?

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「楽譜が読める」にもいろんなレベルが

レッスンしている生徒さんからよく言われる言葉が「楽譜って読めないとダメですか?」「楽譜読むのが苦手なんですけど」。
ひとことで「楽譜が読める」と言っても、実はそのレベルは様々です。

  1. リピートマーク(ダル・セーニョとかコーダとかね)や、書かれているコードは理解できるレベル。
  2. 書かれている音符を自分の楽器で演奏できるレベル。
  3. 楽器を持たなくても頭の中で書かれている音符を再現できるレベル。

一般に「楽譜が読める」というと3番目の「頭の中で再現できるレベル」をイメージすることが多いのですが、ポピュラー音楽の現場ではそこまでのことを要求されることは経験上ほとんどありません。1番目にあるように、最低限のリピートマークとコードを理解できれば十分とさえ言えます。
ちなみに僕は2番目〜3番目の間、ちょっと2番目寄りくらいかな?と思っています。

楽譜の書き方なんて自由!

「記譜法」という言葉があるくらいですから、厳密に言えばルールがあります。しかし、僕の仕事のフィールドであるロック・ポップス系の現場では必ずしもそうとは言えません。
過去に経験した例で言うと…

キャリア30年を誇る某大物プロデューサーの現場では

五線紙に書かれているのはリピートマークとコード、そして簡単なキメの部分のリズムのみ。そしてイントロ部分には「蛸蛸」(どういうリズムかわかるよね?)、そして「オアシス!」と書かれているという…。でも、演奏する側はそれだけで曲のビートとアレンジのイメージを全て把握できるわけです。とても優れた伝え方だと思います。

某バンド出身のアレンジャーの現場では

リピートマークは一切書かれておらず、コードだけが書かれた五線紙8枚に渡る楽譜を渡され、譜面台3台を駆使してレコーディングするということもありました。さすがに「これは見にくいっす」って泣きつくと、「だってリピートマーク分かんないんだもん」という答えが…。それでも立派にアレンジャーとして食っていけるのです。

そして大物V系ギタリストが仕切る現場では

ノートの切れ端に小節数とリピートマークのみが書かれているという有り様。どうにか現場で耳コピして対応しましたが、大サビ前にどうしても分からないコードが1箇所。大物V系ギタリストに確認すると「感じてください」というまさかの一言…。ん?待て待て、どういうこと?

とまぁこのように、実際の現場で音符がびっしり書き込まれた譜面を渡されることなんてほとんどないわけです。
おまけにコードの書き方だって現場ごとにクセだらけ。テンション一切書かずに、「80年代以降のギタリストだったらDとかAにはいちいち書かなくても9th入れるのがマナーでしょ」って言うプロデューサーもいれば、ガッツリ全てのテンションノートを書き込むアレンジャーもいるわけです。

じゃあ、楽譜なんて読めなくもプロになれるの?

ぶっちゃけ、「読めなくても大丈夫」です。僕が約2年間ツアーをともにした、メタリカと並ぶ大物HMバンド出身のアメリカ人ギタリストは楽譜が読めないとのことで、実際彼が楽譜を読むことはおろか、手にしていることさえ見たことはありませんでした。ですが、リハーサルの初日から曲は全て記憶していました。しかも僕のパートもほぼ把握していたので、間違えるとすぐバレちゃうっていうね。それにしてもあの爆音の中でよく聞き分けることができてたよなぁ…。

さらに彼は、歌番組の楽屋で他のアーティストの収録を観ながら、2コーラス目にはさらさら弾けちゃうくらい耳が良かったのです。
その他にも楽譜の読めないミュージシャンをたくさん知っていますが、もれなく耳が良い、そしてジャンルを問わず音楽の知識が豊富という共通点を持っています。
問われるのは「楽譜を読むスキル」ではなく、耳の良さと柔軟な対応力なのかもしれません。

ちなみに、男性大物シンガーのEYさん、リハーサルの初日にサポート・ミュージシャンが譜面を見ていると激怒するらしいという噂を聞いて震えたことがあります…。

現場での楽譜の役割って?

簡単に言ってしまえば「地図のようなもの」です。今自分たちがどこにいるのか、そしてこれからどこへ向かえばいいのかを共通理解するためのものですから、前述したように反復記号とコードさえあれば、五線紙すらも不要になる可能性だってあるのです。
とはいえ、レッスンもやっている立場から見れば、リピートマークとコード、そして書かれているリズムくらいは最低限読めた方が、理解が速いってことは言えます。

実は楽譜の書き方には現場(バンド、ソロ・シンガー、レコーディング、ライブなどなど)に応じたちょっとしたコツがあります。これについてはまたあらためてご紹介していきましょう。

では、次回も乞うご期待!

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